手のひらから流れ出す汗の量がひどい。身体中のすべての水分が5かける2本の指と手相の窪みから放出されていくのではないかという勢いで発汗している。この方向で進化した先の私はきっと、ケルヒャーのごとく手から汗を撃ち出す能力者になっていることだろ…
お笑いライブと音楽ライブに年に一度ずつくらいの頻度で行く。 趣味と触れ回るほどの頻度ではないし、こと音楽ライブに関してはわからないことがたくさんある。先日も大好きなバンドのライブに行ったのだが、やはり謎が多かった。 前方傾斜の構造になってい…
お茶を買うのを忘れている。 昼飯を買うことを忘れている。 書類の申請を忘れている。 読みかけの小説を積み上げている。 寝る前に薬を飲み忘れている。 充電をし損ねる。 タイプミスをする。したまま打ち続ける。 暑い。 外が暑い。 昨日嚙み砕いた飴の欠片…
フォーナインが恋しくてたまらない。この世で一番水に近いストロング缶酒製品だった存在。いつの間にか店頭で見かけなくなり、いつの日か終売していたことを知った。 自分が9%の刻印がなされた酒を飲むとき。その意図は睡眠導入に他ならない。ゆえに味はど…
採血してから半日経ってもまだ左腕が怠く感じる。 血が透明な管へ吸い上げられていくのとともに体温が下がる感覚は、スプレー缶に穴を空けた瞬間みるみる冷たくなっていくさまを思い起こす。 自分はスプレー缶をそのまま捨てていい区域に住んでいたからやっ…
再発行したクレカが届かない。 自分だけは引っかからない、とすら思っていない程度に存在感の薄い『詐欺サイト』の実在をありありと見せつけられ掛かり陥り現在に至る。仮に不審なサイトに繋がるリンクを踏んだとて個人情報を入力しさえしなければいいのだか…
その日はお笑いライブを見るために訪れた高円寺を歩いていた。 劇場は現在地の目と鼻の先だが、前の予定が思いのほか早くに済んだので開場まで30分ちかく持て余している状態だ。改札を抜けたすぐそこで、生活に根付いた店が立ち並ぶ市場の活気は、普段閑散と…
知識をひけらかしている時の自分というものはとても見ていられない。 自分が知っているようなことは相手も知っているはずだと(まったく意識せずに)前提を立てている。まず補足なしに話し始めて相手の様子を見てようやく、必要と判断した補足を付け加える。こ…
ベッドフレームの内側二畳に日用品を並べている。夕方になって工具の不足に気づき、模様替えに伴うベッドの解体作業を中座することになったのだ。 部屋の中央、骨だけになったベッドが置かれたことで境界というものの存在を強く感じる。柵のようであり、なん…
趣味とはなんだろうか。 『仕事ではなく、専門でもないが日常的に関心を向けているもの』とか? ここまで書いたところで『日常的である必要はないな』とも思った。 映画館が好きだ。 どでかい音とでっかい画面に圧倒されて、たとえ退屈に感じるシーンがやっ…
たくさんのドラム式洗濯機が回るのを見ている。コインランドリーでは半数近くの機械が作動していたが、店内にいるのは私だけだった。 店内はそれなりに清潔で腰を下ろせる椅子も数脚ある。しかし飲食禁止なうえ外に出て1分も歩けばコンビニエンスストアもコ…
道を歩いていた。 悲しいことに、この時刻にこの道を通りがかると見かける野良の黒い猫を今月に入ってからめっきり見なくなった。白い球体をいくつかくっつけたような犬は相変わらず見かける。 道を歩く。帰路には往路ほどの不安がないから一人言も筋の通っ…
これは先日友達に起こった話なのだが、土を切り分けていたら手が滑って手に持っていたペーパーナイフが左中指に刺さった。 なぜ土を切り分けていたのか? それは友達に尋ねてほしい。犬が好きでおしゃれで嘘もつかないし出発時刻と到着時刻を間違えて楽しみ…
夕方に道を歩いていた。 50メートルほど前方を一人の小学生が歩いていたが、動きが変だ。指の動きを注視したところ、どうやら道路傍に積もった雪山に何か描いているらしい。 歩行にあわせてランドセルを揺らしながら何度も雪山に暖かそうな手袋をなぞらせる…
風邪をひいている。 引いている。 引いている? 風邪というカードを? 風邪を引いている。常に痰が絡んでいるし鼻も基本的に片方、寝ているときは両方詰まっている。それらとは関係なく足の小指の付け根の皮は剥けている。痛い。 二日ほど続いた微熱はアクエ…
体調が悪い。 何年も前から、目を覚ましてベッドから降りると何処かしらの関節が痛いし、気圧次第で頭痛はするし、人の多い電車に乗れば貧血で視界がホワイトアウトする。心療内科に通い出してから幾分ましになったとはいえ、ふと終わりたくなる欲求は常に胃…
体力を使い果たした。ここ1週間とそれ以前の生活リズムがかなり異なっていたため、無意識に疲弊を成していたらしい。 電車を降りてからの帰路で何か長い長いひとりごとを発していたような気もするが、帰宅した途端に室内の空気に紛れて溶けていった。夢の内…
病院に来ている。 診察室は薄暗く、長椅子の背もたれと壁との間の床に敷かれた間接照明が、ぼんやりとした暖色の光を天井に向かって吐き出している。 一定のリズムで水滴がシャーレに落ちる。東急ハンズの実験器具コーナーで売っていそうなインテリアだ。温…
いつでも外に出られるよう準備を済ませておいた。 どこに行くつもりなのか、何をするつもりなのか、なにもかも見当がつかない。 鞄の中に荷物を詰めた。鞄の中に詰めたものが思い出せない。 鍵は鞄の内側にあるジッパーのついた小さなポケットに入れた気がす…
きゅうりを食べないまま一年が終わろうとしている。 少し考えて、夏に野菜漬けの具として入れて食べたことを思い出した。 出されれば問題なく食べるし、一生食べられないとしても諦めがつく。好きでも嫌いでもない距離感の食材だからか、限りなく記憶のなか…
いいコーヒー豆を買った帰り道で野犬に遭遇する。 アパート名が刻まれた看板の下半分が錆に覆われているコーポなんたらと、おそらく今後も開くことのないたばこ屋のシャッターとの間、表通りと裏路地を繋ぐ細い道の奥にその動物はいた。 空は珍しく晴れ渡っ…
その日は電車に乗って目的地に向かう用事があった。利用したことがない路線に恐れをなしつつ身体を電車に乗り込ませる。 車内は空いていた。環境音が少ないことを確認してイヤホンを外す。目的の駅までは10分もかからない。 本を読む気にもSNSを漁る気にもな…
冬に塗れていく。 道を歩く。吐く空気にも吸う空気にも秋が存在していない。 先々月からのつきあいになる右手首の痛みは依然続いている。快方に向かうどころか、患部を庇った影響か痛みは肩口や左手首にまで及んだ。痛み止めの効きも悪くなった。歯止めが効…
いつの日からだろうか。万全の体調で目覚める朝が来なくなって久しい。そもそも人間の体調に万全なんてあったのかさえ疑わしいほど毎日身体のどこかが痛い。ある日は腰、ある日は足首、翌る日は側頭部といった具合に。 そんな日々のさなか、右手首の筋に違和…
平日昼下がりのフードコートにも高校生やビジネスパーソンらしき人々は存在する。会社や学校が休みだとか休憩とかサボタージュとか、理由は個々人によりさまざまだろう。 レジ付近のモニタに番号が表示される。赤と黄色が目に眩しい壁を傍に、これまた赤と黄…
作業中や移動中はスマートフォンでラジオも聞くが、古いWALKMANで音楽を聞くことが多い。少し前に叔父から譲り受けたそれを使い始めてから、以前までなぜかSONYに抱いていた恐れのイメージがやや軽減した。今はドミコの『hey hey,my my?』がアルバム通りの順…
大抵の日において20時を過ぎてから帰路につく。その日は雨が降ったり止んだりしていたから、傘を差したり閉じたりしながら夜の空気の中を歩いていた。 路に人通りは少なく、寄り道をしなければめったに人とすれ違うこともない。たまに遭遇する生き物といえば…
とにかく文字を打ち続けてみる。少したりとも手を休めることがあってはならない。どうしても気に入らなければあとから消せばいいだけのことだ。 何かしてから消すのと、はじめから何もないのとでは大きく意味合いが異なる。側から見れば同じことであってもだ…
将来に向けてスムーズに動くために敷き始めていた動線がぷつりと切れた。つまり現状はかなり絶望的である。 にも関わらず諦めるつもりが毛頭湧いてこない。どちらかというと勇気が無い故の姿勢な気もする。 いつにも増して面白みを欠く。いちいちメタ視点を…
大学で文章演習という授業を受けていたことがある。正確な名前ではない。こういうところに性格が出るもんだ。 話を戻す。美術科で、普段はデザイン史や工芸の授業がほとんどだったため文章や法学といった専門外の授業は珍しく、未就学児の頃から国語もとい文…