ぬいぐるみとしゃべるひと

お茶を買うのを忘れている。

昼飯を買うことを忘れている。

書類の申請を忘れている。

読みかけの小説を積み上げている。

寝る前に薬を飲み忘れている。

充電をし損ねる。

タイプミスをする。したまま打ち続ける。

暑い。

 

外が暑い。

昨日嚙み砕いた飴の欠片が喉の内部につけた窪み、で。噎せ続けている。

右腕が痺れている。

眠くないのに欠伸が止まらない。

気乗りしない誘いを断るだけのメッセージを返せない。

部屋の曲がり角で壁に肩を打ち付けた。

風呂場で体が動かなくなる。

寒い。

 

役所の椅子に腰かけて電光掲示板を眺めている。

喉が痛い。

うまく歩けない。ずっと昔から。腰の骨と脹脛は別々の生き物で、互いに遠慮し合いながら伺いを立ててどうにか前に進んだり回ったりしている。

腹が減っている気がする。

何も食べたくはない。

飲み物を買い忘れた。