ファッキュビの災難(※痛い)

これは先日友達に起こった話なのだが、土を切り分けていたら手が滑って手に持っていたペーパーナイフが左中指に刺さった。

 

なぜ土を切り分けていたのか?

それは友達に尋ねてほしい。犬が好きでおしゃれで嘘もつかないし出発時刻と到着時刻を間違えて楽しみにしていた映画に遅刻するし何もないところでよく躓くような良い奴だから。

 

土を切り分けるのは、この日大半の時間を他のさまざまな作業に費やした末に行う最後の仕事だった。これだけ働いた日の晩酌はさぞ旨かろうと胸が躍るなか、指に刺さったナイフを引き抜く。これだけ働いて指にナイフが刺さった日の酒はさぞ旨かろう。

 

とにかく左中指に細長い穴が空いた。細い木に空いているウロを想像してほしい。近くで見ると小さい虫がたくさんいてヤだなぁと思う、あれ。

『穴が空いた』といっても皮が2、3枚開いただけだ。でも、指紋が割れてしまった。

 

先週まではスマホのロック解除に使う指紋登録を中指に設定していたが、つい最近顔認証の機種に買い替えたため、指紋が割れても問題なくロック解除できた。

機種変更しといてよかった。

 

 

刺さった瞬間に戻る。すごく痛い。なんだか最近指周りの怪我が多い気がする。すぐに土を洗い流してティッシュを巻きつけた。

ほんの数分前まで「怪我しないよう慎重に刃物を使うのだ」というオリジナルソングを歌っていた(近頃はハズビン・ホテルを見た影響でよく歌う)のに、ティッシュ越しに中指を押さえながらその脈動を感じている。

 

ひとり駄々をこねながら(これはつまり「なぜ数分前まで危惧していた怪我を実行してしまうのか」というオリジナルソングを歌いながらという意味)土を切り分ける作業を終えて帰宅の準備を整える。

 

左手を心臓より上の位置に挙げながら道を歩く。

左半身だけ外科医だ、と歌いそうになるのを抑え込んで入店したドラッグストアで絆創膏を買った。

 

絆創膏を貼るためにティッシュを剥がした中指は、まだ熱を持ってはいたものの血は止まったようだった。

「とにかく慎重に生きる。転ばないように歩くのだ」という旨の長尺セリフをつぶやきながら歩いていたら、平坦な道で躓きそうになった。そして駅前の凍っていた道で普通に転んだ。

どれだけ今日の酒を旨くしたら気が済むんだ。

 

酒は旨かった。業務スーパーのれんこんはさみ揚げも旨い。