レントゲン写真はかっこいい

いつの日からだろうか。万全の体調で目覚める朝が来なくなって久しい。そもそも人間の体調に万全なんてあったのかさえ疑わしいほど毎日身体のどこかが痛い。ある日は腰、ある日は足首、翌る日は側頭部といった具合に。

 


そんな日々のさなか、右手首の筋に違和感を覚えて少なくとも1ヶ月が経過した。

激痛ではないし常時の痛みでもなかったから無視を決め込んでいたが、ひと月も続くとこの痛みが生涯の相棒になる気配を感じ始めたので、病院に行くことにした。


病院で簡単な問診をしてレントゲンを撮ったが原因はよくわからなかった。手を使う作業が多いから腱鞘炎かと思っていたがそうでもないらしい。


原因は不明だが痛みがあるのは確かなため、とりあえず痛み止めを山ほどもらった。飲み薬と貼るタイプが各1種類と、塗るタイプが2種類。なんでこんなに多いんだろう。


そういうわけで痛み止めを貼ったり塗ったりした部分を保護するため、ここ数日間は右腕に包帯を巻いて生活している。

 


他の人がどうかは知る由もないが、自分の場合体調が悪いときほどテンションが上がる傾向にある。精神と身体でバランスをとっているのだろう。よくできたシステムだ。

 

 

 

ある日の夕方、アルバイトに行くと気さくな社員Dさんが右手首に巻かれた包帯を見るなり「リスカ?」と言ってきた。

普段はその軽妙なノリに根暗な僕は圧倒されがちだが、今日はひと味違う。何しろ普段以上の体調不良に気分が高揚している。


「だとしたら(包帯)巻くの左腕じゃないですかwww」

我ながら咄嗟に出たにしては巧い返しだと思った。

全然ウケなかった。

というか滑った。

変な空気になった。

最悪だった。

 


なぜウケなかったのか、考えられる原因は5つある(手首の痛みの原因は1つもわからないのに)。

①僕の利き手が右だということを社員Dさんが知らなかった

②自分で自分のジョークに笑う意識の低さに憤慨していた

リスカについて明るく喋らないほうがいい

④面白くない

⑤嫌われている


いずれにせよ己がジョークセンスの不甲斐なさに落胆し、その日は若干痛みが穏やかだった。

病院に行ってから1週間経ち、痛み止めも飲み続けているがこの日の落胆以上に効いたことはない。

やはり精神と身体のバランスをとっているのだろう。本当によくできたシステムだ。