謹慎の欠如と手汗の充満

手のひらから流れ出す汗の量がひどい。身体中のすべての水分が5かける2本の指と手相の窪みから放出されていくのではないかという勢いで発汗している。この方向で進化した先の私はきっと、ケルヒャーのごとく手から汗を撃ち出す能力者になっていることだろう。見れたものではない。助けてほしい。

 

先日、遺族として葬式に参列した。感傷的な部分は大幅に省かせてもらう。なんというか、理由が何であれ泣いている親を見るのは気分のいいものではないなと思った。

 

ところで『参列』って『参加』の冠婚葬祭限定版ワードだと思い込んで使っているけれど間違いだったらどうしよう。別にどうもしないのだけど、調べてみるとかしこまったイベント全般に用いるらしく、概ね合っていたことに安堵した。

 

とにかく葬式に行った。

急いで買った安物のペラペラ喪服上下セットに、やたら分厚い黒ネクタイがアンバランスで、正中線が落ち着かなかったのを覚えている。

 

あとはどうやらうちは親戚が多い。

多いらしい。

多かった。

今回初めて会う親戚が、記憶の限り認識していた数の4倍はいた。

 

4倍分の親戚にも、葬式というものにも初めて会う。しかしこれだけ多くの親戚がいるのに、なぜ自分は葬式参列の経験がないのか不思議でならない。知らないところでたくさん死んでいたのだろうか。

 

葬式では焼香を上げる。『焼香を上げる』。創作物で目や耳にしたことがある存在。それだけの存在。もちろんやったことはなく、やり方も知らない。完全に雰囲気でやった。

直方体の大体真ん中に仕切りの入った箱がある。半分には敷き詰められた灰のようなもの(抹香というらしい)があるのでそれを何本かの指で摘まんで、もう半分側にある石のようなものにかける。これを何回か繰り返す。石のようなものから熱と煙が立ち上ったのにはちょっとワクワクせざるを得なかった。化学だ。

 

告別式やら火葬やら、二日にわたっていろいろやった。

火葬の機械が、未来と古代のハイブリットSF的世界観を思わせた。かと思えば親族(4倍)で骨を拾う様相はかなりアナログで、何のということはないが境界線を行き来している感覚に陥った。

 

一連の流れをの中で焼香をあげるタイミングはいくらかあったのだが、毎回信じられない量の抹香が手のひらにくっついていた。砂場で遊んだ後の小学生でももう少し綺麗だと思う。黒点の手。言わずもがな手汗の影響だ。

 

汗腺を切ろうね(異星にいこうね)

異(下)の内容と無関係な感想

お笑いライブと音楽ライブに年に一度ずつくらいの頻度で行く。

趣味と触れ回るほどの頻度ではないし、こと音楽ライブに関してはわからないことがたくさんある。先日も大好きなバンドのライブに行ったのだが、やはり謎が多かった。

 

前方傾斜の構造になっているわけでもない平地に様々な体格の人間が立って並び、曲に合わせているんだかずれているんだかわからない奇怪なリズムでわざわざ頭の上に掲げた手を宗教めいた不気味な動きでステージに向かって揺らす過半数の統率には形容しがたい胸騒ぎを覚える。

こんな人間はきっとライブに行くべきじゃないことはわかっている。

 

ニガミ17才のライブでねこ子が披露されたときの、間奏に合わせて平沢あくびが高級ティッシュをばらまく時間は客の『あの動き』が全くなかったし高級ティッシュも貰えたからマジでサイコーだった。

最寄りのライブハウスにヘルシンキラムダクラブが来るときは一報ください。

ぬいぐるみとしゃべるひと

お茶を買うのを忘れている。

昼飯を買うことを忘れている。

書類の申請を忘れている。

読みかけの小説を積み上げている。

寝る前に薬を飲み忘れている。

充電をし損ねる。

タイプミスをする。したまま打ち続ける。

暑い。

 

外が暑い。

昨日嚙み砕いた飴の欠片が喉の内部につけた窪み、で。噎せ続けている。

右腕が痺れている。

眠くないのに欠伸が止まらない。

気乗りしない誘いを断るだけのメッセージを返せない。

部屋の曲がり角で壁に肩を打ち付けた。

風呂場で体が動かなくなる。

寒い。

 

役所の椅子に腰かけて電光掲示板を眺めている。

喉が痛い。

うまく歩けない。ずっと昔から。腰の骨と脹脛は別々の生き物で、互いに遠慮し合いながら伺いを立ててどうにか前に進んだり回ったりしている。

腹が減っている気がする。

何も食べたくはない。

飲み物を買い忘れた。

癖でストローを嚙みまくっている

フォーナインが恋しくてたまらない。この世で一番水に近いストロング缶酒製品だった存在。いつの間にか店頭で見かけなくなり、いつの日か終売していたことを知った。

 

自分が9%の刻印がなされた酒を飲むとき。その意図は睡眠導入に他ならない。ゆえに味はどうでもいい。正確には『どうでもいい味が望ましい』。甘みも苦味もアルコール臭も必要なく、欲しているのは素早く呑み込める引っかかりのなさと速やかに満足感を得られるだけの炭酸だ。

 

酒が飲みたいわけではなくなく眠りにつきたいだけだ。ただ酒が飲みたいならビールや日本酒を選ぶ。迅速な摂取のために挿したストローからストロングゼロを吸いこむ。やっぱり甘すぎる。

帰りにマスク買うの忘れた

採血してから半日経ってもまだ左腕が怠く感じる。

血が透明な管へ吸い上げられていくのとともに体温が下がる感覚は、スプレー缶に穴を空けた瞬間みるみる冷たくなっていくさまを思い起こす。

 

自分はスプレー缶をそのまま捨てていい区域に住んでいたからやったことないけど。同じ原理の実験を義務教育の理科の時間にやった気がする。気がするだけで、身についてはいない。


恥ずかしい話だがいまだに注射が苦手で、必要に迫られたとき以外の接種は避けてきた。

そういえば、あるときを境に『注射の針ってこんなに細かったっけ?』と思うようになった。おそらく毎回思っている。年に一回やるかどうかなので『毎回』といっても大した数ではないけれど。

 


病院を出て喫茶店に入ると隣にめちゃくちゃ後鼻漏の鼻すすりをし続けている人がいてめちゃくちゃ気になり続けた。

黄砂と花粉の季節、来ている。

おとなしくcanvaでいく、暫くは。

再発行したクレカが届かない。

自分だけは引っかからない、とすら思っていない程度に存在感の薄い『詐欺サイト』の実在をありありと見せつけられ掛かり陥り現在に至る。仮に不審なサイトに繋がるリンクを踏んだとて個人情報を入力しさえしなければいいのだからと気にも留めていなかった。

 

結果、画像編集ソフトのインストール画面に紛れていたそいつにまごうことなきバキンバキンの個人情報を打ち込み尽くして、変な画面になった。変な画面。画面が切り替わった瞬間に察した。敗北した。

中高時代の情報の教科書を捨てたのが仇になったか、と反省する。黒い画面に白字のいかにも胡散臭い英文体メールが月末に幾ら引き落とすといったようなことを示しているのを確認して、即刻カードを解約した。

 

その詐欺サイトにもいちおう解約手続きのフォームがあったので2件のメールを送った。

1件目は(日本語でのメールは対応していないとのことだった)構わず3000文字に想いを乗せて送信したもの、もう1件は詐欺サイト対処サイトにて公開されていた文章を基にした英語でのメール。前者にだけ手続き完了の返信が来た。なぜ。

 

今のところ謎の請求は来ていない。

新しいカードが一刻も早く届いてほしい。オンラインショップの登録カード情報を変更する作業に追われる様が目に浮かぶ。

 

いい画像編集ソフトがあったら教えてください。

敬称を5回略す

その日はお笑いライブを見るために訪れた高円寺を歩いていた。

劇場は現在地の目と鼻の先だが、前の予定が思いのほか早くに済んだので開場まで30分ちかく持て余している状態だ。改札を抜けたすぐそこで、生活に根付いた店が立ち並ぶ市場の活気は、普段閑散とした町に腰を据えている自分にとって異国を思わせる。下北沢では感じないなにかがある。下北沢も好きだけど。

 

天気予報をチェックして歩き出すと、元竹内ズのがまの助っぽい人とすれ違う。背丈も髪型も目つきも似ている。確信できないのはマスクで顔の半分が隠れているのと、持っている鞄がビーズ細工まみれだったからだ。多分よく似た別人だろう。それにしても似ていた。

 

さて、ライブの時間まで如何にして暇を埋め立てようかと辺りを見回す。喫茶店に入るほどの時間はない。買い物をするほどの手持ちもない。タモリ倶楽部高佐一慈がプレゼンしたランキングよろしく行き止まりの路地を探す散歩に繰り出すことにした。

 

路地が好きだ。ブログのタイトルに入れるくらいには『みち』というものに惹かれている。

都心部では無限に見られる、建物どうしの隙間の空間も好きだ。無の空間だったところの両端にオブジェクトが設置されると途端に線/道ができる。人間が入れないほど狭く、建物の陰で暗く、先が見えない。実際のところはある程度進んだところで別の建物の壁に阻まれて行き止まりになるのだろうが、立ち入って確認できない神秘がある。

 

表通りの市場を抜けると、いかにも裏路地でございといった佇まいの道に入る。店主と常連だけで世界が完結しているバーや喫茶店がいくつも目に入る。

 

ふらふらと歩き回っていると道に迷って駅の付近にあるスーパーに戻ってきてしまった。行き止まりを探すにしてもまだ時間がある。一旦スーパーに入ることにした。

 

生鮮食品を冷やかしていると大柄な男性と髪の長いひとの二人組と目が合う。すぐに視線を逸らしてじゃがいもの品種を確認するそぶりに戻る。マヂカルラブリーの村上に似ていた。

最近ラジオを聞いていないから正確なことはわからないが高円寺から引っ越したのではなかっただろうか。きっとよく似た別人だろう。一応店を出た後『いとくとら』で画像検索はした。隣にいた髪の長いひとに似ていた。きっと別人だろう。

 

裏路地に戻る。開場まで10分を切っていた。商店街と住宅街とを繋ぐ狭い路地は夕方の空気の冷たさも相まってとても刺激的な魅力があった。中野に行ったときも感じたが意外にコンビニは少ないなと再認識しつつローソンに入ると、ちょうど出ていく客とすれ違った。元竹内ズの竹内に似ていた。身長が160cmくらいしかなかったから絶対に別人だろう。あの人に限っては絶対に、確実に一縷の可能性も根絶して別人だ。もし本人だったら長生きしてもいい。そのくらい背丈が違う。

 

ライブ会場に向かった。開場5分前に入れた。

 

ライブ終わり、駅までの道を間違えて完全な行き止まりにたどり着いた。

高円寺はいい町だ。