ウォーキングというほどでもなく

でたらめな筋トレを5日ほど継続してやると鍛えられそうな筋肉が全て筋肉痛になる日がやってくる。それが来た日の日記だ。

 

筋肉痛を押してのトレーニングはよくないと聞くし、仮にそうでなくても普通に痛くて無理なのでその日はプランクもやらないことにした。とはいえ全く身体を動かさないのも却って落ち着かない。日が落ちてきて涼しくなってきた時間帯、散歩に出ることにした。

 

 

 

自宅からやや離れたあたりまで無心に歩く。

道の途中で川があったので、土手を少し降りて近づく。このまま川沿いを歩いて時間が経ち、夕方の川面に反射する夕陽なんか見れた日にはもう最高の思い出になるだろう。それはさすがに紛れもない過言だとしても、3時間くらいは『よかったなあ』と思えるはずだ。

とりあえず『目で追えないほどの緩やかさで空の真ん中から沈んでいく途中の太陽と川』を収めようと思いスマホのカメラを起動させる。

目の前でトンボが交尾をしていることに気づいてすぐに川から離れた。

 

 

 

川から離れた道を歩く。

それなりに大きい公園があった。数年住んだ町だがこの辺りを歩くのは初めてなのでどの景色も新鮮に見える。

公園の面積に対して遊具が極端に少ない。危険な遊具を撤去する流れはどの地域にもあるものだと思った。過去に住んでいた幾つかの実家付近の公園も、久しぶりに訪れると砂場とベンチと滑り台だけになっていたり、ベンチと鉄棒だけになっていたり、ベンチと牛の形のベンチだけになっていたりして寂しさを覚えたものだ。

その公園はベンチとシーソーしかなかった。

公園から離れた。

 

 

 

住宅街を歩く。

坂の上まで行くと裕福そうな家が多くなるのも、どこの町でも見られる傾向だと思う。手入れの行き届いた庭もあればただ広いだけの庭もあるが、基本的にどの家にも庭がある。資産が増えると庭を持ちたくなるのだろうか。庭は資産のメタファーかもしれない。

※間違ってもメタファーではない。言葉を正しく理解しないうちにでたらめなことばかり言うのはやめた方がいい。

あとシーソーは遊具の中だと危険度高い方だと思う。

 

 

たくさんの資産を眺めながら歩く。

そういえば先ほどから羽虫が多い。ふと肩口に視線を落としたら羽の生えた黒い点が二匹止まっていたし、なぜか眼鏡を通り抜けて瞼に一匹止まっている。

家に帰りたくなった。まだ15分しか経っていない。でもすごい帰りたい。

 


少し道幅の広いところに出た。

廃業したたばこ屋の隣に自動販売機がある。黄色い炭酸飲料のボタンに虫がたくさん集っていた。帰りたくなった。

 


再び川の近くに出た。寄り道(この散歩そのものが寄り道みたいなもの)を繰り返していたら、先ほど来ていた場所よりいくらか上流の方まで来ていたらしい。ちょうど日没の時刻だった。

川面に反射した夕陽のあんまりな眩しさに眼球の裏までチカチカした。かげ送りの要領で白い光の中に羽虫の輪郭が視界にくっきりと浮かび上がってくる。


家に帰った。